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ショートショート 11

夏の幻
参考曲:夏の幻/GARNET CROW

ここは、海の家。
彼女とよく来た思い出の場所だ。
すでに海開きは終わっているはずなのに、小雨のせいか客は誰もいない。
あたりを見回すと、やはり彼女がいた。

「や、久しぶり」

なんとなく、ここに来れば会えると思っていた。会えると信じていた。
彼女は相変わらずきれいだ。
その黒い髪も、白いワンピースも、オレンジのサンダルもよく似合っている。

「元気にしてた? 私は元気だけども」

死んだのに、元気も何もないだろうに。
あの頃と変わらない様子で、聞いてくる。
もしかして、「死んだ」ことを理解できていないのだろうか?

どちらからともなく、ベンチに腰掛ける。
ほとんど間を開けずに寄り添う。
冷たいかしら、と思ったけれど、体温はよくわからなかった。

「ここに来ると思い出すね、いろんなことを」

ケンカもしたし、仲直りもした。
ものすごく遠くまで泳いで行ったこともあるし、二人一緒にクラゲに刺されたこともあった。
あの事故があるまで、ここは二人にとって特別で大好きな場所だった。

「あ、だめ、やっぱり塩が多いからかな」

ふと見ると、足が消えていくところだった。
海辺の塩分で成仏するだなんて、洒落が効いている。

「でも、最後にまた会えて、良かった」

彼女は最後にそう言って、笑った。
先を越されてしまった。
同じことを言おうと思っていたのに。

「さよなら」

彼女は少し、泣いているようにも見えた。
私も少し、泣きそうになった。

自分の足元を見つめる。
彼女とおそろいのオレンジのサンダルが、さらさらと消えていくところだった。

どうか私の行くところが、彼女と同じでありますように、と祈った。

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プロフィール

Author:モルフェ
HAM ◆HAM/FeZ/c2
SS保管庫です。
ここでのSSとは、主に既存のキャラを使わないショートストーリー、ショートショートのことです。
タイトルに歌詞を引用することが多いですが、歌の世界をそのままストーリーにしているという訳ではありません。

個人的なお話はこちら
tv_pops★yahoo.co.jp

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