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ショートショート 5

スイミーのお話
参考曲:なし


赤い魚の兄弟たちが、優雅に海の底を泳いでいる。
それを遠くから眺める、黒い魚の姿があった。
名前はスイミー。体の色はみんなと違ったが、泳ぐのは誰よりも速かった。
「やあ、スイミー」
彼に気付いた一匹が、近くに来て言った。
「今日もカラス貝みたいに真っ黒だね」
「……うん」
何気なく言った一言かもしれないが、彼には悲しい言葉だった。
彼は自分の黒い体が嫌いだった。赤い魚の兄弟たちも、きっとこの黒い体を嫌いに違いない。

ある日、大きなマグロが海の底をさらい、赤い魚の兄弟たちは一匹残らず飲みこまれた。
スイミーは助かった。いつもと同じように、岩陰でその様子を眺めていただけだったからだ。
もちろん追いかけられたとしても、逃げきる自信はあったが。

それから、スイミーは海の底を寂しく泳いだ。いや、もともと泳ぐときはいつも寂しかったのだ。
赤い魚の兄弟たちがいたころは、一度だって一緒に泳がなかった。
泳ぐスピードが違ったし、何より自分だけが「違う」ということが恥ずかしかったからだ。
みんなの目も、どことなく憐憫を帯びているように思え、スイミーはますます自分の殻に閉じこもってしまっていた。

またある日、同じような赤い魚の兄弟たちがやってきた。
「やあ、君はカラス貝のように真っ黒だね」
まただ。スイミーはうんざりした。体の色がなんだというのだろう。
「僕ら、マグロを追い出したいんだけど、いい考えはないかな」
スイミーはとても賢かったので、マグロを追い出す名案がすぐに浮かんだ。
しかし、そのためには自分の黒い体を「黒いからこそ」使う必要があった。
スイミーには、それはとても恥ずかしいことのように思えた。
「さあ……思いつかないな」

赤い魚たちは、岩陰に入りこんできた。スイミーはちょっと嫌な気分になったが、仕方なく入れてやった。
もともと同じような赤い魚たちが、同じくらいいたのだから、また元に戻っただけだ。

そのときスイミーは気づいた。
赤い魚が飲みこまれた兄弟達の他にいるとは知らなかったスイミーにとって、
今日の出会いが衝撃的だったことにようやく気がついた。

「他にも……きっといるんだ。僕のように黒い魚が!!」
そう言うが早いか、スイミーは岩陰を飛び出し、海の底を全速力で泳いだ。
こんなに楽しい気分で泳ぐのは、生まれて初めてだった。
遠くでマグロがこっちを向いた気がしたが、どうせ追い付けやしない。
マグロなんて、スイミーにとっては怖くもなんともなかった。
それよりも、早く自分と同じような黒い体をした魚たちに会うのが、楽しみで仕方がなかった。

風の、いや、波の噂で聞いたのだが、また赤い魚たちはマグロにやられてしまったらしい。
しかし、スイミーにとって、自分を差別の目で見るそんな魚たちのことはどうでもよかった。
今ようやく3匹の黒い魚を見つけたところだ。まだまだ見つかるだろう。
スイミーはこれからのことを考えると、ワクワクして眠れなかった。
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テーマ : 雑記
ジャンル : 日記

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モルフェ

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ここでのSSとは、主に既存のキャラを使わないショートストーリー、ショートショートのことです。
タイトルに歌詞を引用することが多いですが、歌の世界をそのままストーリーにしているという訳ではありません。

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