コンテントヘッダー

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
コンテントヘッダー

ショートショート 1

僕の左手を知りませんか
参考曲:僕の右手/THE BLUE HEARTS

僕の左手05
「僕の左手を知りませんか」
そう言いながら、夜の繁華街をうろつく若者がいた。
彼を遠巻きに見ている者はいるが、誰も近づこうとはしない。
当然だ。左手が落ちているのを見かけた者などいるはずもないし、
もし見かけた者がいるとしたらすぐさま警察にでも届けるか、食卓のジョークになるくらいだろう。
それにここは、そんな猟奇事件が起こったこともない、平和な町なのだから。
それに何より、彼にはしっかりと左手がついていた。
「僕の左手を知りませんか」
「あんたの左腕には、しっかりと左手があるじゃないか」
そうご丁寧に忠告してあげた者もいた。しかしそんな声は聞こえないのか、彼は相変わらず辺りを探し続ける。

「僕の……僕の左手……」
面白がって遠巻きに見つめていた者も、段々薄気味悪くなってきたのか、離れて行ってしまった。
辺りにはほんの少しの人だかりが残った。
「僕の……」
僕は、彼のすぐ近くにいた。
僕は彼がなぜそんなにも左手を探したいのかがわからなかった。
ふと、目が合った。
彼の目は少しだけ希望が満ちたように光ったが、僕の曖昧な表情のせいですぐに悲観した顔つきに戻った。

僕は少しだけ意地悪な気持ちで、思いついたことを口にしてみた。
「あなたの探している左手とは、これではありませんか」
そう言って左手を差し出してみた。
彼は嬉しそうに僕の左手に飛びついたが、しばらくさすりまわすとまたがっかりした顔になりこう言った。
「違うようです…」

僕のその試みは周りの野次馬に伝染したらしく、みな面白がって左手を差し出した。
彼は喜んで一つひとつの左手をさすりまわしていたが、お目当ての左手にはなかなか出会えないようだった。

そんな中、豪快な声がした。
「おい兄ちゃん!!おれのこの左手じゃあどうだい」
大きな男が立っていた。体つきはごついが、きれいな手をしているようだ。
「おれの左手は、手相見によると最高の運勢らしいぜ。なにしろギャンブル運、仕事運、恋愛運、なんでも好調なんだとよ」
「れ、恋愛運……」
彼は導かれるように大男の左手を握り、食い入るように見ていた。
「これだ……これこそが僕の左手だ。これさえあれば彼女も……」
そう言うが早いか、彼はどこからか出したナタを振り上げていた。

血に染まった繁華街の裏道に、悲鳴と怒号が響き、彼はお目当てのお宝を嬉しそうに抱きしめていた。
「健康運だけは良くなかったみたいだな……」
僕のつぶやきは、きっと誰にも聞こえなかっただろう。
スポンサーサイト

テーマ : 雑記
ジャンル : 日記

コンテントヘッダー

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

モルフェ

Author:モルフェ
HAM ◆HAM/FeZ/c2
SS保管庫です。
ここでのSSとは、主に既存のキャラを使わないショートストーリー、ショートショートのことです。
タイトルに歌詞を引用することが多いですが、歌の世界をそのままストーリーにしているという訳ではありません。

個人的なお話はこちら
tv_pops★yahoo.co.jp

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。